『鋭い眼差し』
BL要素あります。お気をつけください。
あなたの鋭い眼差しに射貫かれて、足がすくんだ。
気づけば目前に迫ってきていた瞳から目を逸らせないまま、壁とあなたの間に挟まれる。
緩く掴まれた手首に、ほんの少し、ひりついたような痛みが走った。
「一人で行くなと言ったのはお前だろう?なのに、なんで私を一人にするんだ」
怒りに満ちたように吐き出すその言葉は、その実は寂しさと切なさを孕んでいた。
尋ねている風でもない言葉に適切な返事が見つからなくて、ただただ整った顔を見つめる。
ぴりつきながらも湿り気を含んだ空気は、まるであなたの心を反映したようだった。
俺の手首を掴む手に力がこもる。
普段はつり上がっている眉毛をハの字に下げながら、願うように、祈るように、あなたは微かに震えた声で言葉を紡いだ。
「私にはお前が必要なんだ。置いていかないでくれ。頼むから、一人にしないでくれ。私は、お前がいないと、だめなんだ」
どうしてだか、そんな顔を見たくないと思った。
あなたには、笑っていて欲しいだなんて。
あなたには、幸せでいて欲しいだなんて。
その感情を言い表す言葉が『愛』ということに気づくのに時間はいらなかった。
空いている方の手であなたの頬を撫でる。
少し肩を震わせたあなたが、鋭さを削いだ代わりに僅かに潤ませた視線を寄越した。
「つきしま…」
「俺が隣にいていいんですか」
喉の奥から絞り出した声は、自分でも笑えるくらいに震えていた。
「ばかすったれ。わいがいいんじゃ」
乱暴に袖で涙を拭ったあなたが、その手で俺を抱き締める。
俺も、あなたの背中に手を回した。
「俺もあなたがいいです」
ゴールデンカムイより鯉登さんと月島さんです。
今回はカプ要素なしで書こうと思ったんですけどねぇ。おかしいな。
最後がいい感じに締められなくて無念です。
10/15/2024, 10:26:25 AM