某ゲーム二次創作だけど最早三次かもしれない創作
翠緑の竹垣の細い路地を急いで進んでいく。
ここは古都の現と幽冥の境目、竹垣の路地は複雑怪奇に入り組んでいる。
ふと足元の欠けた石畳を見る、この石畳の傷の形状は先程見たような…。
「まずいな迷ってしまったか?」
旧い地図と周囲の状況を照らし合わせ細心の注意で進んだはずだったがいつの間にか迷ってしまったようだ。
この路地全体に結界が張り巡らされて複雑な迷宮となっている、この中で大きな力を振るうことは禁じられていて使ってしまえばたちまち反転して逆に自分に襲いかかる仕組みになっている。
古より聖と魔が出入りする都ならではの罠であり災
いを遠ざける知恵でもある。
このまま翠緑の竹垣に永遠に掴まってしまうのだろうか。
「一刻も早く戻らねば…。」
待っている者がいる、簡単に諦めるわけにはいかない。
惑わすかのように非常に細かい雨が降り出した。
冷静になって周囲の竹垣、垣根の迷路を突き進んでいく。
焦るな冷静に周囲の状況を見ろと己に言い聞かす。
似たような景色がひたすら続いていく。
竹垣を右に曲がり左に折れてゆく、やっとのことで竹垣の迷宮を出ると周囲一面は朱く輝く紅葉の景色となって出迎えた。
小山は秋を向え燃え盛るような紅葉に様変わりし麓には小さな池があった。
池のほとりに佇む人影がある━、彼女だ。
彼女は透き通るかのような青灰銀の髪にビロードのような黒の衣、細かい水玉が髪にふんわりベールのようにかかっているかのようだった。
「遅〜い!待ちくたびれました。」
彼女はむくれた顔でこっちを見やる。
「悪い、遅れてしまった雨が降ってきたなさあ行こう。」
ひとしきり謝るとむくれる彼女に急いで上着をかける、雨はまだ繊細に降り続いたままだ。
彼女はほっとした表情でふいに手に触れてくる少しひんやりとした柔らかな感触がする。
「行きましょ。」
柔らかな手に触られ握り返すと握った手と手が次第に熱を帯びてゆく。
瞬間雨もまるで柔らかに感じられるようなそんな心地よい感じの中、紅葉する山々を背に帰路へ着くのだった。
「柔らかい雨」
11/6/2023, 3:01:40 PM