トッポ

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つまらない鼻歌だった。ただ、傍にぶら下がった柿が、まるで日の光に通して照らされているかとでも言うような夕暮れの中で、コオロギの音よりも早くに歌われ、土臭さと共に風に乗る柑橘の匂いを上書きする彼女の匂いに包まれて、つい聞き入る日々が続いていた。その旋律は、今となっては良く覚えていない。陽に照らされ眩しいというような、閉じた笑顔。そこからの言葉に、ただ耳を澄ませていた。

10/20/2025, 5:12:17 AM