白井墓守

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『旅は続く』

僕らの旅は、一人になることで終焉を迎える。
誰もが望まない正答が、僕らの旅だった。


真っ白な雪が降り積もる中、二人で倒れ込む。
厚い灰色に覆われた空を、酷く荒れた息をつきながら、片手に握りしめる固い紫水晶を強く握りしめる。

「僕ら、試練に勝ったんだね」
「ああ、俺らがやってやったさ」

どちらともなく手を繋いだ。
酷く熱い。まるで焼かれた鉛を直接握ったかのように。
雪の寒さが体に染み入る中、唯一そこだけに熱を感じる。
まるで、真っ暗な室内に蝋燭の火が灯ったように。

「ここで、おわりだね」
「ああ、そしてはじまりだ」

紫水晶が光始める。

彼の海のような深い青と目が合った。
あぁ、もうこの色が視られなくなることが、こんなにも苦しい。

「お前の真っ白な髪が無くなるのは本当に惜しいな」
「それを言うなら僕だって、君の青い目をずっとみていたかったよ」

二人で微笑む。
つーっと、目尻から涙がこぼれた。
紫水晶から光があふれ出し、光が収まったとき。

――そこには一人の人間しか居なかった。

真っ黒な髪の赤い瞳の少年だけが、そこに居た。

黒髪で青い瞳の少年も、
白髪で赤い瞳の少年も、
どこにも存在しなかった。

『二人が一人になる魔法石』

これが、僕らが考えた“ずっと一緒に居る”方法だ。

ゆっくりと起き上がり、体の具合を確かめる。
事前に相談していたとおり、二人の丁度中間のような体に、満足する。

先を見据えた。
真っ白の雪の中、先は見えないが、じっと目を凝らす。
そして、たしかに、一歩を踏みしめて、歩き出した。

……僕らの旅はここで終わった。
だから、


「――約束通り、“私”の旅を始めよう」


あとには、砕けた破片の紫水晶のみが、真っ白な雪原に遺されていた。


おわり

9/30/2025, 11:26:57 PM