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一人でミュージカルを観に行くこと。
とびっきりの悲劇のやつを。

悲劇が好きなのは、心をより強く動かされるから。
怒りや悲しみ、負のエネルギーをのせた歌には
日常生活を送っているだけでは得られないような、尋常ではないパワーがある。

自分の力では変えられない運命、冤罪、もう戻れない後悔。それでも人が生きているっていう、執着に近い生命の力強さを感じる。

もはや歌が上手いか下手かの次元を越えた、演者自身の人生や心がストレートに刺さってくるのが悲劇の歌だ。

その衝撃を仲間と分かち合うのもいいけれど、一人で咀嚼して受け止めて、感じたままにひとりじめしたいというのもある。皆が泣いているところで泣かなくてもいいし、泣いていないところでも思いきし泣けるのがいい。天の邪鬼っぽいけれど。

そう、一人観劇の何がいいって、ミュージカルを一人で観ていても浮かないどころか、一人で号泣していてもまったく違和感がないのが面白い。
そんな空間、まず日常にはない。異様だ。

幕が閉じ、やりきった、という笑顔のカーテンコール。会場はずびずびと鼻を啜って、やまないスタンディングオベーション。

一人を求めてきたはずなのに、演者さんも客席も、ああ、私たち今ひとつになってると思える。

一人観劇は私にとっての当たり前だけれど
この感動は当たり前ではないんだな。


7/9/2023, 10:14:14 PM