NoName14

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高く積み上がった書物に埋まるように
黙々と必要な情報を追いかける。

西陽が少し眩しいなと…
ふと、顔を上げると君が居た。

束の間の沈黙。

『相変わらず、すげぇ集中力だな』

彼は、少し呆れたように
ぐーっと伸びをして
そのまま高く上げた手で私の頭を撫でた。

『相変わらず、ボサボサだ』

私は、ぼろぼろとこぼれ落ちる涙も
ここが図書館であることも
高く積み上がった書物も何もかも
忘れて、目の前の彼に抱きついた。

「来週って…帰るの来週って…」

優しく包み込むように、背中をさすって
くれる彼は

『けど、もっと早く会いたかったから』

と、静かに囁いた。


【お題:突然の君の訪問。】

8/28/2023, 4:18:38 PM