ちぐ。

Open App

24時の池袋

池袋の夜は、東京の中でも特別にざわついている。
ネオンの光は疲れた色をして、ビルの隙間から漏れる風は湿っていた。
それでも、僕にはこの場所が今夜だけは美しく見えていた。

「24時、池袋駅東口で。」
君と交わした短いメッセージは、何度も画面を開くたびに胸を締めつける。
会う理由なんて、もうなくなっていたはずだった。
お互い別の人と未来を歩くことを決めた。
それでも、最後にどうしても会いたかった。

待ち合わせの柱に背を預けながら、僕は人波を探す。
君の姿を見つけるたび、違う誰かであることに落胆し、
違う誰かであるたび、君を探す気持ちが募っていく。

「君が来たら運命。来なかったら…さよなら。」
そう心の中で繰り返す。

時計の針が真夜中を指す。
途端、駅前のざわめきが少しだけ静まり、
遠くの足音が、僕のために近づいてくる気がした。

だけど、その足音は僕の隣をすり抜け、別の人のもとへ消えていった。

僕はポケットの中で、君からの通知を待った。
スマホは沈黙を守り、代わりに冷たい風だけが頬を撫でる。

「さよならだね。」
呟いた声は、夜の闇に溶けていった。

それでも、君がこの街のどこかで同じ月を見上げていると信じたかった。
叶わぬ恋だとわかっていても、好きでいた時間は、確かに僕のすべてだった。

8/15/2025, 4:47:59 PM