崩壊するまで設定足し算

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▶106.「君の声がする」
105.「ありがとう」
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1.「永遠に」近い時を生きる人形‪✕‬‪✕‬‪✕‬
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〜君の知らない物語〜

対フランタ技術局局長としての仕事は終わった。
そして私は技術局から水と食料を持ち出し、山に入った。
地下通路よりもこちらの方が早く人に会えると思ったし、
どうせなら仲間には自身の不調を隠し通したいという意地もあった。

私は山登りをしたことがなかったから、山を甘く見ていたのだ。
休み休み歩けばいい、火を焚いたら見つけてもらえる、
どこか楽観的に考えていた。


先の見えない道無き道を歩いていったが足の踏ん張りがきかず、あっと言う間もなく、足を滑らせてしまった。
私は転げ落ちて、もみくちゃになるのを感じつつ意識を手放した。





祠の掃除に来たら、知らない誰かが倒れていた。
大きい怪我は無さそうだが、あちこち傷だらけだ。

「おい、生きてるか?起きろ」
「あ、動いたぞ」

「う…」

「消耗が激しいみたいだな、助けられるかな」
「祠の近くに倒れてた。つまり御山様の加護がある。だから助かるし、助ける」

「そうだな。じゃあ、運ぼう」
「俺が背負うから、お前は先導を頼む」






(イレフスト国の人が優しかったらいいなとは思ってたけど、
本当に優しくされると、なんだかな)


運良く、山を下りられたらしい。

やっと寝床で体を起こせるようになったので、
窓の外に広がる景色を見ることができた。


「起きたか」
声に振り返れば、がっしりとした男がのっそのっそと入ってきた。

「私は、生きているのだな」

元々の不調、これは男の話によると風邪をこじらせていたらしい、
それに加えて山歩きと滑落。自分でも死んだだろうと思ったが、

「御山様の加護のおかげだ」

この村の人達のおかげで、なんとか生き延びられた。

「まだ寝てろ。また来る」


寝て、少し起きて、また寝て。

少しずつ回復して、普通の食事が食べられるようになった頃。

「客?私に?」
「そうだ。会うか?探していたらしい」
「わかった、会うよ」

私の返事を聞くと、男は廊下のある方を向いて入ってこいと声をかけた。

「失礼する」

聞き覚えのある声だと思った。
だが、入ってきたのは見知らぬ人だった。

線の細い、女みたいだが多分男だ。

「できれば二人だけで話したいのだが、良いだろうか」
「私は構わないよ」
「この方は御山様の加護を受けている。危害を加えるような真似をしたら」
「そのようなことはしない。誓ってもいい」

村の男が出ていくと、
残った細い方が、こちらを向いた。

「お久しぶりです。と言っても、この姿では分からないでしょうが、局長」
やはり聞き覚えのある声だ。その証拠に目を閉じて聞けば…

「____君の声がする…まさか、」
「そうです。____です」

どういうことだ?
私の困惑を見て、目の前の彼は一つ頷く。

「全て、お話します」

2/16/2025, 8:52:42 AM