YOU

Open App

「えっと、土曜日は用事があるから、日曜にね」
「わかった。何するか考えといてくれ」
「うん。じゃあまたね」
助手席のドアを開け車を降りると、バイバイ。とドアを閉め、彼女は家へ帰って行く。電気が点くのを確認するまで、車を停車させたまま待つのが、俺の習慣になっていた。
「あ、電気点いたな。そんじゃ帰るか」
ギアをドライブに入れ、パーキングブレーキを解除すると、車は静かに走り出す。俺にとって、この瞬間が、一番淋しく感じる時間だった。

「いつも笑顔でバイバイ。って言って彼女は帰るけど、俺みたいに淋しく感じたりしないのかな」
自分の家に着き、一服しながらそんなことを考える。彼女の存在は、いて当たり前になりつつあるから、離れるとき、俺は淋しいのかもしれない。
「本当なら今すぐ。それがムリならいつかは…」
彼女が同じ家にいるのが当然な、日常生活を送りたい。もう、バイバイって言葉は聞きたくないくらい、彼女のことを想っているから。
「どう思われているかわからないけど、勇気を出すしかないよな」
俺は、彼女との関係を一歩でも進めるため、伝えていない想いを、告げることを決めたのだった。

6/23/2023, 8:38:17 AM