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【ありがとう、ごめんね】


この言葉を連想させる笑顔には、何度も出会った。

力になれると思ってた。近くに寄り添えると思ってた。そしてあなたの心を軽くすることができるはずだと。寄りかかれる相手が見つかるまで、ここにいるよ。
けれど同時に、「この言葉」を敏感に感じ取る。
ごめんねと言わせることへの抵抗、罪悪感、違和感。
慌てて手を引いて、きゅうに恥ずかしくなる。自分が誰かの力になれるなんて、誰かのたすけになれるなんて、なんとおこがましいと。無力だ。

そんなことをくりかえしてここまで来たけど、近頃ではもう考えなくなった。
私よりももっとじょうずに寄り添える人がいる。近くも遠くもない適切な距離で接し、深くも浅くもない適切な言葉で、相手を笑顔にできるひとがいる。
私が下手に手をさし出すよりもずっと、安心できる方法で。
だから私は相変わらず、いつでも腕を伸ばせる距離で見守る。
それでもいいのだ、仕方ない、見つけてしまうのだから。

たった一言で相手を救えるのはいつだって主役だ。
影の努力に気づいてもらえるのも、主役の役割だ。
ただ、そういう努力に気づいてもらえないのもまた主役だ、なんて都合がいいだろうか。

12/9/2024, 12:46:04 AM