抗いがたい。
何とも抗いがたい。
けたたましい音が部屋じゅうに鳴り響く。
その音源を必死に探り当て、何とか止めようとするが、ぼうっとした頭ではうまく操作できない。
もとはといえば自分のせいで、この爆音が響いているため、昨日の自分を恨む。
しかし、どうしようもない。
やっとのことで音を止めると、うめき声に似た声を漏らしながら頭を持ち上げた。
スマホのアラームのスヌーズ設定を解除し、頭部に続いて上半身を持ち上げようとするが、ニュートンもびっくりの重力が働き、なかなか起き上がれない。
スマホをもう一度見て、時間を確認する。
もう起き上がらなければ。
ベッドから抜け出さねば。
この天国から抜け出さねばならない地獄よ。
「…ん?」
スマホには大きな書体で7時が表示されている。その下に上にそっと表示されている、「土曜日」の文字。
今日が休みであると理解した瞬間、上半身は重力に抗うことをやめ、ボスンという音を立てて崩れ落ちた。
やろうと思っていることはたくさんあるのに、結局それを叶えることのできないまま終える休日がこのところ毎週続いている。
この目覚めたタイミングで、気合いで身体を起こし、掛け布団を突っぱねて、ベッドから脱出した方がいいに決まっているのだ。
でもそれでは平日と同じではないか。
休みの日には、欲望のままに惰眠を貪るという贅沢をすべきなのだ。
瞼はもう一度、まどろみに落ちた。
6.欲望
3/1/2023, 2:25:41 PM