「本当に一瞬?」
「ああ、一瞬だとも」
装置に横たわり、イヴが問う。青白い光に照らされて、不安な表情が一層儚げに見えた。
政府はとうとう緊急事態を収束させる為、全国民をコールドスリープさせる事を決意した。
職業、地域、年齢別に組み分けされ、全ての人類や保護対象の生物達が眠りにつく。
「だけどアダム、何年も眠るのよ?下手したら数千年も!私が目覚めた時、溶けて消えてたりしないわよね?」
順次眠りにつくが、目が覚めるのがいつになるのかは分からない。数年後かもしれないし、数十年、下手したら彼女の言う通り数千年と眠ることになる。
「まさか。人体実験さえ済んでるんだ。大丈夫だよ」
そう言いながら急にそうなるんじゃないかと不安になる。 二人用のポッドでどちらもドロドロに溶けてしまったら…。
「それに、もし溶けてしまったら、文字通り一つになるだけさ」
「やめてよ!私…こんな終わり方嫌よ?」
「冗談だよ。大丈夫さ。何があっても僕がずっと隣にいる。怖いことなんかないさ」
無機質なアナウンスが響き渡る。
『これよりコールドスリープを開始します。対象者の方は速やかにポッドへお入りの上—』
「嗚呼、神様…」
彼女が十字を切る。僕は彼女を抱き込んだ。
「愛してるよ」
「ええ、私も…」
プシュという音がするとゆっくりとポッドの扉が閉まる。冷気と共に照明が暗くなる。
緩やかに眠りにつく様に、僕たちの意識は遠のいていった—。
『こちら世紀の大発見です!過去の遺物と共に、男女のミイラが発見され世界が震撼しております。研究者の間では、こちらは紀元前○年前の棺では無いかとされております。二人は寄り添う様に収まっていたことから、恋人または夫婦ではないかと……』
≪永遠に/眠りにつく前に≫
11/3/2024, 3:24:50 AM