「君」という存在を失念していた。
それは遠い昔の話であって、今は声も容姿も記憶の端々から消えている。
────否、消えていると言うと語弊がある。
「むかしのままの君」が生き続けているのだ。
別れて何10年とカレンダーは舞い落ちただろうか。
季節も知らないうちに僕たちを置き去りにしただろうか。
それすらも記憶していないのに「むかしのままの君」は記憶に存在し続けている。たしかに生きている。
可愛らしくはにかんで笑う顔
考え事をするときに口許に手をやる癖
少し切りすぎて歪な前髪
どれも、僕には愛おしかった。
もう時は過ぎて互いに違う相手と共に生活をしているわけだが、こうして「思い出」として蘇る。
今も変わらない癖で、可愛らしい笑顔で笑っているのだろうか。
それはもう僕に向けられた物ではないのは承知の上だけれど。
遠い遠い、初恋の話。
君は今。
2/26/2026, 4:37:11 PM