YesName

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【同情】
葬儀場、少女は集まる同情に耐えかねて化粧室に逃げ込んだ。
僕はよく知っているはずのこの少女が、誰なのかを思い出せなかった。
そしてしばらくして出てきた少女は、俯いて肩を震わせながら、時折手で顔を覆っている。
僕はその姿に何故か違和感を覚えた。
出てきた少女は何やら噂話をしている大人達に、声を震わせながら「あの…」と話し掛ける。
僕はこの瞬間やっと気付いた、この少女は先ほど化粧室に入っていった少女とは別人である事に。
見知らぬ少女は大人達と、ありもしない死人との思い出話に花を咲かせる。
元の少女はどうなってしまったのだろうか?
僕はそれが気掛かりで仕方無かった。

ふと見知らぬ少女の方に目をやると、大人達から何かを受け取っていた。
紙幣だ。昨今の不況によりこの街の治安はどんどん悪くなっていると聞く、彼女は身内を喪った哀れな少女に成り代わり金銭を騙し取ろうとしているのだろう。
不思議と怒りは込み上げて来なかった。それは彼女がどうしようも無く幼かったからだ。
元の少女に成り代われるだけあって、恐らく10歳前後だろう。こんなに幼くして人を騙すのに手慣れた様子から察するに、彼女は今よりもっと小さな頃からこのように人を騙して生活してきたのだろう。

僕は彼女に同情した。
彼女は他の参列者の輪にも入って、言葉巧みに次々とお小遣いを貰っていく。
その様子を僕はただ眺めている事しか出来なかった、もし僕がまだ生きていたとしてもあの哀しい少女を止める事なんて到底出来なかっただろう。

ある程度会場内を廻った後、少女は出てきた化粧室に帰っていった。
「…。……?」
しばらくして、僅かに話し声のような音が聞こえてくる。
生憎僕にそのような変態的な趣味は無いものの、元の少女の無事がどうしても気になった為、その会話に少し耳を澄ませる。
「…なら…から…、もう……。」
「…から、これは同情代…。」
「…ど…じょ…い…?」
「そー同情代!何の助けにもならない同情には僕もううんざりでさ、だから金取っといた。」

僕は、彼女に関心してしまった。
彼女は哀しい少女なんかでは無かった、それは彼女の人生においてどんな哀しい出来事が起きていたとしても。
彼女は今、絶望せず前を向いて自由に生きていた。
「…な…で?」
「べ…に、ただ…気まぐれ…けど。」
「……ありが…う。」
そこまで聞こえてすぐまた、1人の少女が化粧室から出てきた、今度は本物の方だ。

本物の少女は初めに見た時より軽い足取りで出てきて、僕の遺影に向かって小声で話し掛ける。
「今までありがとうお兄ちゃん。私が真っ直ぐ前を向けるまで、これからももうちょっとだけ、見守っていて欲しいな。」
ようやく思い出せた、この少女は僕の妹だった。
少女の声に僕は大きく頷いた。
見守ろうとも、もしそれを君が許してくれると言うのなら。
どうせ死んでいるんだ、あの幼い詐欺師のように、僕は自分の為だけに身勝手な方法で彼女の願いを聞こう。

そして、僕は初めて人に憑いた。










ーーーーー反省(後日)ーーーーー
・これ単体で何がしたかったのか分からない
・そもそもお題に沿ってない
・長い
・構成が粗雑
・普通に汚い

2/22/2024, 4:29:48 PM