九至 さら

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『光と闇の狭間で』

生涯で何度、何回、私は神頼みをするのでございましょうか。信仰もろくにせず、ただ祈るだけの行為、いや、ただ手を合わせるだけの行為をする、私たちに神は何を恵んでくれるのでしょう。

「私は罪を犯したのでは無い。私の行動に罪が有ったのだ。」
「相変わらず、変な言い回しをするのね。」
そう言って笑った彼女の顔も、今は靄がかかって思い出せない。

「私は神を信じていない。神がもたらすものは、見せかけの幸福のみであろう。」
とある男がそう言った。
「私は生涯において、幾度となく神頼みをしてきた。」
「試練、告白、岐路、縁、運命、結末、生死」
「奇跡とは神が起こすもので、奇跡は必然である。」
「神は実在するのだと、実在していないと考えることさえも罪なのだ。ただ神という存在を受け入れ、心臓を鳴らし、脈を打つ。光を浴び、絶えず血を巡らせ地に立つ。人生の意味をあえて述べるなら、そう言葉を紡ぐだろう。」
「生を享受し、この世界に身を任せなければいけない。つまり、疑うことは罪なのだ。私はそう教えこまれ、あらゆるものを受け入れてきた。善も悪も疑わず、問いを持たず、ただひたすらに受け入れてきた。」

「」
「しかし私はもう、そして、疑うことを罪とした神の存在を信じることができないのだ。」


「私は神がいることを知っている。」

「信じる、信じないではなく存在するのだ。」
「お前が選択したことも、お前がこの地に生まれたことも全て必然。神の思うままだったというわけだ。」
「神に祈り続け、信じその結果妹を失ったことも全ては変えられぬ運命だったのだ。」




つづく

12/2/2024, 10:59:41 AM