nameless

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 日の出、なんて言葉は、日が沈んでしまうからあるんだ。けれど、一日も日が沈まない場所があることをご存知かい?僕はそこへ、行ってみたいんだけれど。

「馬鹿な。ここは×××だよ。日は落ちて沈み、そうして昇り続けるんだ。これからもね」

 それに僕たち、ここからは出られないでしょう?
続けてそう言うと、彼は明らかにしょんぼりとした声で、外へ出てみたいなあと吐息をふうと絞り出すように呟く。

「あ、そうだ」

 この真白い部屋の中には、ひとつだけ小さな小さな窓があるね。背伸びをして、覗くのだ。そうすると、小さな小さな、水溜り程の池が見えるね。では、其処に映った、太陽を、見ようではないか。

「いいね。乗った」

 彼はそう言うと、窓の方へ走った。その窓はひどく小さいのでひとり用だ。僕は彼の背中を眺めた。小さい身長で、懸命に踵を上げて彼は窓枠に手をかける。

「わあ」

 彼は小さく声を上げた。太陽が昇るだけのことに、あれだけ感嘆の声をあげられるとは。その純粋な姿は僕にとってあまりにも眩しくて、少しだけ羨ましい。きっと彼が、白く輝く水面に映る、灼熱の光を、見ていることも、少しだけ、羨ましいのだ。

「僕にも見せてよ」

 
 いいよ。そう言って彼は一度外を見たまま、瞬きをした。振り返って僕を見たその瞳には、未だにその輝きが幾分かの煌めきか残っている。

 僕は窓枠に駆け寄って、窓の外を見た。水面に映った眩いばかりの太陽を見た。ちょいとこれは、僕にとっては眩しすぎる!

「……目が潰れた」
「ええ…」

 僕はあまりの眩しさに、目を瞑りその上から手のひらで覆った。瞼の裏に痛いほど光が焼き付いている。 その姿は、死ぬまで忘れられそうにない。

「いつか君と一緒に、外で太陽を見たいものだ」
「…うん、そうだね」

 僕たちは、厳重に外から鍵のかけられた何にも無い白い部屋で、また他愛のない一日を過ごすのだ。


《2.日の出》



一次創作のひらめきを得るためにこのアプリを始めたのですが、私はこういうよくわからないふわふわ浮いているお話がどうやら好きみたいです。思いついたまま走り書きで10分くらいで書いています。
考察妄想は皆さんに任せることにしたいと思います。読んでくださりありがとう御座いました。

1/3/2024, 11:13:24 AM