《夢じゃない》
予知夢、というものがある。
夢の中でみたものが現実になることだ。
私はいつの頃からだったかは記憶にないが、それを見続けていた。
まるで、現実と見間違うような夢、というのがあるだろう。
たとえば、学校に行って一日を終え、そして目が覚めてはじめて夢だと気がつくのだ。
毎日、毎日。私は明日の夢を見る。
それの事に私は疲れきっていた。
だが、ふと、視点を変えてみたのだ。
夢の中ならば、何をしても良いのでは?
現実で失敗すると取り返しのつかない事も、夢の中なら覚めれば元通りだ。
だから、私は夢の中で色々やった。
テストの内容を覚えたり、話したことのないクラスメートに話しかけてみたり、……好きな人に告白してみたり。
夢と現実の区別はシンプルだ。
2回目で無ければ、それは全て夢なのだ。
だから、だからこそ。
……相手に対して殺意が芽生えるような事を言われたとき、私は思ってしまったのだ。
これは1回目だ。こんなことは無かった。じゃあ、夢だ。
――じゃあ、殺してしまっても良いのでは??
そう、私は殺した。
だが、聞いてほしい。私は殺したいと思って殺した訳ではない。殺しても此処は夢の中だと思って、殺したのだ。
ねぇ、刑事さん。私の言っている意味が分かりますよね? ここは夢の中なんですよ。だってこんな事は一回目なんだから。
そういう私に対して、目の前の刑事は呆れたように肩をすくめた。
――ここは、現実ですよ。
――嘘だ。
夢じゃないなら、夢じゃないというなら、私はいったい……。
……だって、一回目じゃないか。
8/8/2025, 2:37:29 PM