ホシツキ@フィクション

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18時 彼の部活が終わる時間。もう少ししたら校門に来るだろう。

『一緒にかえろ…一緒にかえろ…』

と脳内で何度もそのセリフを呟く。


真夏の西陽が肌にじんわり染み込んでくる。
それと同時に汗もかいてきた。

すぅーはぁー、何度も深く深呼吸をする。

『きた…!』

何度も聞いた彼の笑い声。大丈夫、大丈夫、ちゃんと言える。

『一緒にかえろ!』

「佐藤くん、一緒に―――」
「―おお、伊藤さんじゃん。今帰り?」
「あ、うん、あの…」
「気をつけてねえ〜!んじゃまた明日!」
「また…」

私の目の前で彼は友人たちに別れを告げ、ひとり帰ってゆく。

あぁ、今日もダメだったなあ。

はぁ、とため息をつく。

『帰ろ』


彼と同じ方向に、彼と少し距離をとって歩く。
振り向かれたりしたら恥ずかしいので
ちょうど帰り道の途中にあるコンビニに駆け込んだ。
じんわり汗ばんだ肌をコンビニのクーラーが効いた冷たい空気が包み込む。


『あ、ガリガリ君…』

私は大好きなガリガリ君を買った。
コンビニを出るや否やすぐに開けてガリガリ君にかぶりつく。
「おいしい〜…!」

「あ、伊藤さんじゃん」
「…佐藤くん…」

最悪だ、アイスがっついてる所見られちゃった。

「伊藤さんもガリガリ君好きなの?」
「うん…」
「俺も好き!だから食べたくなって戻ってきたとこ!」
「そうなんだ」
「伊藤さん家こっち側?ちょっと待ってて、、一緒帰ろーぜ!」

思ってもいない言葉に、思わず目を見開く。

『え、え、え、佐藤くん…と?』

すぐに彼は出てきて、勢いよく袋を破る。
私よりもさらに豪快にガリガリ君にかぶりつき、
「んーーーっ!」と言葉にならない声を出す。

『「可愛い」』

あ、しまった。思ったことが思わず口からこぼれてしまった。
だってほんとに、可愛いなって思ったし…!

「…伊藤さん、ずる」
彼の耳が赤いのは暑さのせいか、照れているのか。おそらく両方だろう。

「そのセリフ、俺が言いたかったのに…」


ぽとり、と私のガリガリ君が地面へ落ちた。

“あたり“

カナカナカナカナ、二人の間には遠くの山のヒグラシの鳴き声が鳴り響いていた。


【時間よ止まれ】~完~




付き合う数秒前って1番ドキドキする時間ですよね。
お互いの気持ち分かってるけどあと一歩な時間。


いつも♡︎ありがとうございますm(_ _)m
すごい励みになってます!

9/19/2022, 1:08:14 PM