香草

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声をかけたのはなんとなくだった。
大学で久しぶりに会った彼女はとてもつまらなさそうな顔をしていた。
いつものようにくだらない話をしても上の空で、反応も面白くない。
だからなんとなく「世界終わらせに行かない?」と声をかけたのだ。

いろんな国を渡り歩いて、いろんな街をドライブした。
どんな国や街でも車の中ではいつもパーティーだった。音楽を爆音で流してお互い助手席で変なダンスを踊った。今という瞬間を楽しんだ。

以前彼女は言った。
「全部が不安なんだ。自分のことも分からなくなるし将来のことも。3分後ですら何が起きるのか分からなくて怖い。」
彼女は雲のように白い髪の毛をいじりながら言った。
きっと本心を話してくれているのだろう。でも彼女の憂鬱はそれだけじゃないような気がした。
だから下手に励ますこともできなくて、
「とにかく私はあんたがいればいいよ。不安に感じたら電話して。」
彼女からの電話の着信音はベルの音に変えた。

世界の果て。
2人で朝日を見に行った。
立ち入り禁止のフェンスを飛び越え、走った。
彼女を失いたくなくて、手を繋いで走った。
真っ白で強い光は体を包み込み、私たちは世界を終わらせた。




※PEAPLE1 『鈴々』MVより着想
大好きな曲です。ぜひ聴いてみてください。

https://youtu.be/7synqOiMORc?si=CwVjC0nNwTqQZWzs

1/9/2025, 4:13:03 AM