赤いヘッドホン

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人は強い幸せを感じると、つい願ってしまう。
「この時間が永遠に続けばいいのに」と。

きっと、辛い経験をした者であるほど強く思うだろう。
もうあんな思いはしたくない、幸せになりたい、と。

もしも世界の時間を司る時計が目の前に現れたなら、恐らくほとんどの人間が、幸せなあの時に戻りたい、あの幸せをもう一度、と思って針を戻すだろう。
勿論、記憶は自分だけが引き継ぐという傲慢な前提で。
例え違っても、そんなのお構いなしに。
何度も、何度も。

__そんな時計がもし存在したら。
私は、それは悪魔の作った道具だよ、と言われても納得してしまうだろう。

無限に甘い蜜を吸い続けられる。
誰に咎められることも無い。
邪魔されることも無い。
少なくとも、自分含めその場にいる全ての人間が幸福。
デメリットなんて、未来が来ないこと、ぐらいだろう。
そんな幸せ×永遠のコンビは、とても魅力的だ。
そして、それを求めてしまう自分がいる。

なんなら、最高に幸せな時間に戻した後、そのまま時計を分解して針を本体から取りたい。

…本当に取ってしまいたい。
永遠の幸せを、手にするために。

2/6/2023, 4:56:15 PM