ゆかぽんたす

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「ちょっと来て」
泣いていたあたしの手を取って彼は歩き出した。何処へ行くの。何処だと思う?会話はそれきりで続かなかった。5分くらいちょっとけもの道みたいなところを歩いて、ついたよ、と言われた時には目の前には満天の星空が広がっていた。
「きれい」
「だろう?」
真っ黒い空の中に、無数のきらきらしたものが浮かんでいる。ここは都会と違って空気が澄んでいるからこんなに綺麗に見えるんだよ。彼の説明を聞き流しそうになるほど、あたしは夜空を見上げるのに夢中だった。星の名前なんて、実際にひとつも知らないけれど、この景色を美しいと素直に感じられることができた。感じた途端、止まっていた涙が再び出てきた。でもこれは決して悲しい涙なんかじゃない。美しいものを美しいと思えることに喜びを感じた。と、同時にさっきまであたしの頭の中を支配していた嫌な気持ちが不思議と小さくなってゆくのが分かった。瞬く星が綺麗。今はただそれだけを思って、飽きることなくいつまでも上を見ていた。

3/16/2024, 12:35:56 AM