電車に揺られ、ただ遠くを目指す。
誰も知らない場所へ、只管に、遠く、遠く。
終着駅はよく知らない田舎町。
昼に出た筈が、もうスッカリ夜である。
とりあえず、持参した縄を片手に森へと入った。
森は夜に塗られていて、蛍が宇宙を創っていた。
生まれた光の後を追って、産声が空に谺する。
近くで祭りでもやっているのだろう。
祭囃子と篝火の明かりが、
木々の隙間から微かに覗いている。
全く、
これから死のうってのに煩瑣いったら、
ありゃしない!
いま正に、一人分の呼吸が消えると言うのに、
世界は随分と暢気なものだな。
6/28/2024, 4:31:00 PM