「雪」
「道理で冷えるわけだな」
カーテンを開けて外を覗けば、街並みが白銀に輝いている。
「ほう、雪か」
肩に腕の重みがかかって、すぐ耳元で恋人の声がした。先程まで寒さで不機嫌だったくせに、妙に機嫌の良さそうな声である。
「雪が好きなのか?」
寒いのは嫌いなくせに。体温が低いからか気温が低いのが堪えるようで僅かに機嫌が悪くなる。だが言外に匂わせたそれは伝わらなかったようだ。
「雪は良い。白に鮮血が映えて、美しいからな」
上機嫌に続けられた言葉に納得する。ぶれない男だ。
「庭に冬薔薇でも植えるか」
ふと思いついて口に出せば背後の男が上機嫌に笑った。
1/8/2024, 9:54:43 AM