ほろ

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先生、今日ってクリスマスだっけ?
のんびりと間延びした声が、隣からした。声の方へ目をやれば、視線が俺ではなく外へ向いている。それを追って窓を見れば、ぼんやりと色とりどりの光がガラスに反射していた。
「今日はクリスマスじゃないよ」
「そだっけ? 何日?」
「22日」
「全然違うじゃん。ウケる」
スマホを弄りながら、全然ウケてない顔。
ウケる、って語尾につけておけばいい説とかあったっけ。その辺のジェネレーションギャップってよく分からない。
「つーか、早く帰れよ。いつまで人の家いる気だ」
「いーじゃん。先生おひとり様でしょ」
「お前に言われたくないっての。彼女はどうしたよ」
「知らない」
タ、タタン。何かを高速で打った後、スマホをテーブルの上に置く。
「先生、25日暇?」
「急に話題を変えるな」
「いーから。おひとり様同士、チキン食べに行かない? 予約した」
「予約してから確認するな」
行くけど、と付け加えれば、奴はにぃと笑った。
「じゃ、チキン食べたらイルミネーション見よ」
「今、窓開ければ見れるだろ」
「25日じゃないと意味ないでしょ」
別にイルミネーションなんていつ見ても同じだけどな。その辺も、若い奴と感覚が違うらしい。
「ね、約束」
俺の肩に頭を乗せて言うものだから、思わず溜め息をついた。

12/14/2023, 1:48:26 PM