『どこにも書けないこと』
誰しもが他人には言えない性癖をひとつやふたつ
お持ちだと思います。私もですわ。
なのでここ(悪役令嬢の日記)に記すことにします。
私はただいま絶賛連載中の「どすこい!ナスビくん」という作品にどハマりしてますの。
バトルあり人情あり涙ありの熱いストーリーが繰り広げられている素晴らしい作品ですわ!
その作品で私は、
運命的な組み合わせを見つけたのです。
そう、『トマ斗×ナスビ』ですわ。
私はこの二人がどうなるか気になって気になって、
夜しか眠れない病にかかってしまいました。
誰かとこの想いを共有したいと昂っておりましたが、
悲しい事に「どすこい!ナスビくん」は世間ではあまり知られておらず、周りの者に聞いてもなんですそれは?という反応ばかりでした。
宮廷サロンの貴族たちにとっては他人のスキャンダルの方がよっぽど面白い娯楽なんですのね。
私は布教を諦めて、ひそやかに
推しを愛でようと決心しました。
とはいえ、この有り余る熱情を己の中にだけ
留めておくのは難しかったので、
セバスチャンに語ることにしました。
「トマ斗とナスビは同じ夏野菜村出身で、幼なじみなんですの。華やかで明るいトマ斗と地味で目立たないナスビくん。人気者のトマ斗にナスビは嫉妬して距離を置いてしまいますが、トマ斗が一番気にかけているのはナスビくんなのです。二人のすれ違いと絆を深めていく過程が本当にまじ尊いですわ。嗚呼、神に感謝。セバスチャン、聞いてます?」
「はあ」
私はセバスチャンの他に、以前街で仲良くなった美少女にも話を聞いてみることにしました。
すると彼女は青い目を輝かせながらこう答えました。
「あれ面白いよね!わたしもお気に入りなんだ」
まあ!ここにも「どすこい!ナスビくん」の
愛読者がいたとは!私が歓喜に震えていると、
「トマ斗×にんにくん最高だよね!」
と彼女は花が綻ぶ笑顔で言いました。
……。
……はい?
あなた、今なんておっしゃいました?
にんにく?あれはどんな食材にもいい顔するし○がる野郎ですわ。「トマ斗×ナスビ」しか勝たんですわ。
ええ、あなたの気持ちはよくわかりました。
よろしい、ならば戦争ですわ。
2/7/2024, 6:09:50 PM