「変わらない」
うまく寝付けなくて何となく眺めた曙(あけぼの)の空。帳が晴れ 段々と色付いていくその茜は神々しく目に眩しくて,何故か同時に少し物悲しい。
肌を刺すように張り詰めた空気。普段よりも厳かに感じられるのは心の持ちようゆえか。謀らずとも済ませた初日の出。太陽はいつもと同じただ佇む。
誰もが寝静まった時からひたすらに見続け,瞼に映る光。それはいやに美しく 残酷なほどに幻想的でリアルだった。
矮小な自分と言う存在をまざまざと思い知らされる。そんな圧倒的な自然の営み。
「届けば良いのに」
出たばかりの紅鏡に向かって伸ばした指先は空を切るばかり。届いたとしても何が変わる訳でもないけれど。
それでも届くなら届けばいいと思う。そして願わくば同じ景色を見続けたいとも思うのだ。
「せめて近づきたい」
無情な浮き世。この身は蜻蛉のごとく散りゆくだけ。さればこそ翔てみたいと願うのかもしれない。例えその翼が焦がれることになろうとも。
聳え立つ摩天楼よりもなお遥か彼方。人である限り側に行くことも叶わない届かぬ存在。
「初日の出? 眩しいね」
気が付けば隣に,顕然と降り注ぐ暁光に目を細める君が。
「本当に眩い。綺麗だよ」
何よりも君が。なんて言えるわけもないけれど。今年こそは少しでも近づきたい。たとえこの手が決して届かなくても。願うだけなら許されるでしょう?
ねぇ,僕のソレイユ。
テーマ : «日の出»
1/4/2023, 2:14:38 AM