スープ

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天使の涙か、ティッシュペーパーかと思った。遠くに東京タワーを見据えた私の右頬を、雨がやさしく撫でた。
情緒と実利。いやティッシュに情緒を感じても別にいいんだろうけど。
昔のことを思い出す。未来のことを思い出すことはできないのだから当たり前かも知れないけれど、後ろばかり振り返っている自分が少し嫌いだ。

それは、天使の涙でもティッシュペーパーでもあったのかもしれない。涙は私にこぼれたあと、きっと誰かに拭き取られたのだろう、残っているのはなま暖かい感覚で、気化熱が私からなにかを奪っていく。それがたまらなく心地よい。東京と雨とタワーがあれば、シンガーソングライターなら二曲は書けるだろうけど私にはまだ不足だから、奪われたなにかと一緒に探しに行きたい。別段、大きくならなくてもいい、未来に向けての小さな種を。

11/7/2024, 1:25:45 AM