やまんば

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 この街を出ると決まってから、途端にこの街が愛おしく感じるのは、なぜだろう。
 古びたコインランドリーを汚ねーと思っていたのに、今はもう読書はここでしかできない。
 駅の隣にあるコロッケ屋さん、この道を通ると香るカレーの匂い、セールが始まったスーパーの音、夕陽が綺麗に見える公園。
 小さな一つ一つの感覚を、僕の五感を通して、ぎゅっと束ねる。
 それはまるで、花束を作るための準備みたいだ。
 この街の花束を作ろう。そして、僕の心にそっと渡してあげよう。
 ここで生活した音と匂いを忘れないために。

/花束

2/9/2026, 2:16:16 PM