「ヒビキ」
「え?」
「ヒビキだろ、お前」
「Oh……」
一瞬で理解した。コイツは前世で、私と一緒に世界を元に戻した仲間であることを。彼が、英雄であることを。
「オレ、言っただろ。『もし来世でお前に会えたら、ちゃんと古い方の名前で呼んでやるよ』って」
「……あれマジだったの?」
「うん」
「じゃあガチで告白してたってわけか」
「まあ正確には違うけど」
ああ、懐かしい。
ずっと真夜中だったところから、急に朝のやわらかい光が差し込んできたみたいに、ピッタリハマった。
そうだ、これだ、この感じ。
心地良い。
「んじゃ、せっかくだ、どっかでなんか話そうぜ」
「今から行く予定だった居酒屋でもいい?」
「ん」
私が働いている会社の人にお勧めされて、これから1人で行こうとしていた古い居酒屋に向かう。
そうだ、今思ったけどコイツも成人してるんだな。
前世ではこの日本という国のように強い規制はかけられておらず、アイツは17で、私は15で酒に手をつけていた。今世に来てから、ハタチになるまで酒を飲めないということを知って絶望したのは言うまでもない。懐かしい記憶だ。
「ここ、結構古いな」
「うちの会社の人の趣味だよ」
「え待ってあそこの氷結ってCMでお馴染みの?」
「CMでお馴染みの」
「すげー、前世とは違うなぁ」
「ほんとにな」
「……あ、てかインスタやってる?交換しない?」
「あーそういえば」
「ん、これオレの」
「読み込めた」
「なんかさあ、前世じゃスマホとかなかったからこういうのあんま使わなくね?」
「一度のめり込んだら戻れないからな。自制はしてる」
「偉いなぁヒビキは。とかいうオレもよく分かんねぇからな」
「……今更かもしれないんだけど、ナンパって知ってる?」
「なんぱ??」
こう言う手口をナンパというのだと聞いたことがあるのだが、コイツは知らないらしい。
2025.11.30. 「君と紡ぐ物語」
長くなったその2創作。
コイツ呼ばわりされてる人は男固定ですが、ヒビキは男女どちらでも行けるようにしています。だってどっちでも美味しいから。
カキツバタ先輩みたいな生き方ができたらなーとか唐突に思ったりして。家系の件もあって世渡り上手というか受け流し力最強ですからねこの3留。こんな人になれたら良いなトップ10くらいには入る。
11/30/2025, 4:34:00 PM