冬になると、ムーミン谷は真っ白な雪に覆われて、無色の世界となり、静寂に包まれる。
ムーミン谷の住民はだいたい冬眠するからね。
私が小学生の頃、アニメ「ムーミン」
が初めて放送された。とても大好きだったが、
後に原作を読むと、その世界観には少しズレがあり、原作者のトーベ・ヤンソンも日本アニメ(昭和時代の)「ムーミン」を見て憤慨していたという。
トーベ・ヤンソンには嫌われたが、日本人にはムーミンの世界観が、やはり受けたのだろう、根強いラブコールもあってか、
その後ムーミンは何度もリメイクされて、原作にどんどん近くなって行ってるようだ。
でも、雪が降れば、どこでも世界は真っ白になるのだ。私の田舎は雪国だったから、冬にはムーミン谷みたいな冬景色に変わった。
家の裏手は高校のグランドだったが、グランドは何も無いのだから、雪が降り積もって空が曇っていたら、それだけで本当に無色の世界になる。
子供達は、その周りの土手を利用してソリやミニスキー(プラスチック製の短い板スキー)で滑って遊んでいた。山スキーと違って危険はほぼ無い。
今はたぶんフェンスで囲われて部外者は立ち入り禁止だろうが、昔は(50年前)何でもおおらかだった。
いつも子供達で賑わうグランドなのに、何故か誰も来なくて、自分独りだけで遊んでいる事も、時にはあった。
それはそれで、いろんな事を空想して遊べるから楽しいのだ。遭難ごっこして遊んだり、新雪の上に仰向けに倒れたり、バカみたいだが面白かった。
雪景色は、やっぱりある種の異世界だ。全てが氷り、冷たく、死んでしまったかのように見える(春には復活するのだが)。
死んだふりする遊びなんて不吉だが、雪景色の中で1人で遊んでいると、本当に自分が死んでしまったのではないかしらと錯覚してしまう。
もちろん、バカな子供でしかない当時の私は、死にたいだなんて、これっぽっちも考えてはいなかったが、
冬には死を連想させるものが多く含まれているのだろう。
ムーミン谷の冬には、モランという怪物も登場する。
大きくて、モッサリしていて、何を考えているのか分からない、モランが歩いた後は、道も、草や木も、全てが凍りついてしまう。
本当は、それほど恐ろしい怪物ではないのだが、その呪われたような特性によって、ムーミン谷の住人達からも恐れられていた。
目的は分からないが、何やら唸り声を出して、うろうろしてる怪物が居たら、それはとても怖い。
でも、やはり見てみたい、
トーベ・ヤンソンの世界のモランを。
4/19/2024, 3:38:41 AM