胸の鼓動の高鳴りが収まらない
気づいたらあの人のことを目で追っていた
この胸の鼓動の高鳴りが恋だと気付いた時には、もうあの人のことで頭がいっぱいだった
席が前後になった時、同じゲームをしていた事を知り、沢山話した。フレンド交換もして、チャットでも何回か話した。席が離れても、話したくて休み時間何度も話しかけに行った。
修学旅行の日、彼は風邪をひいて来れなかった。彼は、あまり人と連絡先を交換する人ではなかったので修学旅行中はゲームのチャットで会話をしていたけれど、彼からLINEで話そうかと連絡先をくれた時は、堪らなく嬉しかった。お土産で文房具を買ったのだが、あげた次の日に彼が使ってくれていたのを見て、優しい人だなぁと思った。
冬休み、2人で遊びたいと誘われた。映画を見たあと、カフェに行き、そこでお喋りをした。気づいたら、数時間経っていた。こんなにももっと話したい、この人のことを知りたいと思ったのは初めてだった。
バレンタインの日、私は彼に店で売ってあるチョコを渡した。まだ自分の恋心に気づいていなかったため、友チョコとして渡した。
ホワイトデーの日、彼から手作りのマカロンを貰った。帰りの車の中でマカロンの意味を調べたら、
「特別な人」と出てきたため、心臓がドキドキして考えすぎかなと思ったけれど、次の日、ちゃんと意味があって渡したんだよって言われた時は、友達としてなのか好きな人なのか分からず自問自答をしていた。
春休み、彼から遊びに誘われた。一緒にプラネタリウムを見た。周りの友達からデートじゃん!と言われたけど、まだ自分の恋心に気づいてなかっため、ただの友達だからと返した。
好きだと自覚したのは学校行事で外で高校野球の周りの高校との定期戦を観戦する日、私と彼は臨時応援団をしていたのだが、お昼の休憩中他にも席があったけど彼は私の隣に座った。熱中症気味だった私を気遣って経口補水液をくれた。この心臓の高鳴りは熱中症からきてるものだと思ったけれど、帰りの車の中でもずっとなっていたためそこで初めて自覚した。私はあの人のことが好きなんだ、と。
それから毎日彼が夢に出てきた。学校で彼と話す度、もっともっと彼を好きになった。早く学校に行きたくて仕方がなかった。
高校最後の総体の日、私は彼に手作りのミサンガを渡した。初めて手作りのお守りを人に渡したため、渡しても嫌じゃないかなとか喜んでくれるかなとか頭の中でずっと考えが止まらなくて不安だったけど、渡したその日に足に付けたと連絡が来た時は嬉しくて、彼と同じ場所にお揃いのミサンガをつけた。
久しぶりに髪を切った日、学校で彼から「似合ってるよ、可愛い」と言われた時は今まで褒められてきた中で一番嬉しかった。
彼が、インスタのストーリーに
「待つ身が辛いかね、待たせる身が辛いかね」
と太宰治の言葉を載せていた。どうしてこの言葉を載せてるのかと返信したら、どっちが辛いんだろうねと返ってきた。その後、
「自分は待たせてる自覚があるかもしれない。けど言うには勇気と覚悟が足りない」
と言った。これは告白したいって言ってるのかなと思った。思い上がりかなと思った。彼が私を好いているという確信が持てなかったが、これで好きじゃなかったら思わせぶりにも程があると思って、私は、
「私はどちらかと言うと待ってる自覚があるよ」
と返した。
次の日、どうしてストーリーにあの言葉を載せたのかその意図が知りたくて、実際に彼に聞いた。教室から出て、玄関に向かう階段の途中で…
「いや、どっちが辛いのかなって思って」と彼が言った。その後沈黙が続いた。階段を一段一段降りるのが長く感じた。靴に履き替え駐車場へ向かった。後ろから緊張が伝わってくる。いつもの雰囲気と違うなとすぐにわかった。
名前を呼ばれ肩を叩かれた。後ろを振り向くと彼が立ち止まっていた。
「これからは、友達としてじゃなくて彼氏として支えたい」
初めて、緊張してる彼の声を聞いた。とても愛おしかった。その時の暖かな気温、少し夕日が落ちてきて少し茜色に近づいた空、吹奏楽の演奏の音、野球部の練習の声、ゆっくりと流れる時間がずっと記憶に残っている。
「私でよければ」
嬉しすぎて、私の声も自分じゃないような声がした。多分ものすごく目がきらきらしてたと思う。
あの胸の鼓動の高鳴りを抑えることは誰にも出来なかったと思う。
彼と出会えてよかった。
9/9/2024, 12:55:07 AM