シャノン

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【風のいたずら】



「譜割りするぞー!!」
「はーい」

楽譜の束を抱えながら、先輩が相変わらずな元気の良さで部屋に入る。

「今度の曲はなんですか?」
「これだ!」
「わー…マジですか…」

机に広げられた楽譜は、学生時代に大変苦労した覚えのある一曲だった。

「まさか、またこの曲をやることになるとは…」
「懐かしいなー。お前たちが入部してすぐの頃だったな、この曲をやったのは」

ここにいる全員が学生で、同じ部活動に所属していた頃、最初にぶち当たった壁がこの曲だった。
あの頃の私は、初めての楽器に戸惑い、難しいリズムにも戸惑って、入部早々に挫折しかけていた。
そんな私に、先輩方は根気よく教えてくださったし、同級だって何回も練習に付き合ってくれた。

「ほんとに懐かしいですね…。あの頃はお世話になりました」
「“あの頃”だけじゃないだろ」
「はぁ?」
「こらこら、喧嘩するな。パート決めるぞ」
「はい、すみません」

その時だった。
換気のために開け放っていた窓から風が入ってきて、卓上に広がる楽譜を吹き飛ばしてしまった。

「あーー!!」
「だから閉めようって言ったじゃん!」
「そん時は開けてから1分も経ってなかったろ!」
「まったく、お前たちは変わらないな」
「私が引退してから何があったんだ…?」
「化けの皮が剥がれたんですよ」
「ちょっと先輩!」
「なんてこと言うんですか!」

皆んなであれこれ言い合いながら、散らばった楽譜たちを拾い集める。
学生時代のあの頃に戻ったようで、あの頃よりも仲が深まっているこのメンバーで、また一緒に演奏できることが嬉しくてたまらない。
ちょっとした風のいたずらが、私たちに2回目の青春を運んでくれた。

1/17/2025, 11:41:28 PM