あなたのもとへ
「どんなものでもお届けします」
そんな貼り紙を見て、私はすぐに書かれた住所に向かった。二階建ての小さな建物だった。ドアを開けると、カランとベルの音が鳴った。中は想像したよりもずっと狭かった。大きめのダンボールを二つも置けば、歩くところがなくなってしまうほどだった。
「いらっしゃい、どんなものでもお届けします」
満面の笑みを浮かべて男は言った。
「本当に、どんなものでも届けてくれるの?」
「ええ」
「住所がわからなくても?」
「お任せください」
「……いくらでもいい、これを」
私は手に持っていたくしゃくしゃになった紙を男の前に置いた。離婚届だった。結婚生活五年目にて突然消えたあなたのもとへ。私はもう待つのに疲れました。さようなら。
もうあなたとは他人になりたい。
1/15/2025, 8:28:55 PM