カガミ

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ご飯のおかわりは一回まで。自ら作ったルールを破った昨日の自分を恨む。
給与日前の夕飯の時間、冷蔵庫の中身は空で財布の中身は30円。国民的安価のお菓子がギリギリ変える値段だが空腹の自分にコンビニもスーパーにも行く気力はなく詰みの状態。
「なんかなかったっけ…」
ソースとマヨネーズしか入ってない冷蔵部分を無視して冷凍室を漁る。ワンチャン冷凍ご飯とかないだろうか。
「!」
指先に何か硬いものがぶつかる。期待を込めて引っ張り出すとそれは肉の塊だった。気分が一気に高揚する。しかし、ある重大な事実に気がついてしまった。
これいつ購入した肉だ?
恐る恐る白くボヤける値札シールを指でなぞる。記載されている期日は今から一年前だった。しかも賞味期限ではなく消費期限。
「………」
警告を鳴らす脳内の一方で腹の虫が限界を訴える。目の前に現れたご馳走を前に人間の理性など無力に等しい。

冷凍していたから大丈夫では?
高温で焼けば問題ないのでは?
というか霜が降りているし実質これは霜降り肉では?!

頭の中にこの肉が食べれる理屈を並べ立て、氷ついた肉を電子レンジで解凍してコンロで一気に強火で焼き上げる。おかしい、お酢を入れてないはずなのに酸っぱいニオイがする。お肉に最初から調味料がついてたのかな。そうだろうな!
「いただきます!」
こんがりと焼けた肉塊に両手を合わせる。思い切り噛み付いた。

「意識大丈夫ですかー?点滴打ちますねー」
「あ、はい」
真っ白な天井、真っ白なベッド、真っ白なナースさん。見事なる予定調和。
みんな消費期限は守ろうね。

5/9/2023, 9:58:21 AM