ページをめくって、ページをめくって、それから、本を閉じた。五年間書き残されていたそれは、殴り書きの日もあれば、習字の先生が書いたのではないかと思えるほど丁寧な字の日もあった。その日の彼女の気持ちや、表情が嫌でも想像できてしまう。そもそも、嫌なら読まなければいい話なのだ。こんなもの。
「今更、あなたの気持ちがわかっても救ってあげられないのに。」
日記、と書かれたそれを忌々しく睨みながら、冷めた緑茶を飲み干した。ハンガーにかけられた今の私の胸のように真っ黒な服に袖を通していく。
彼女は今日、箱の中で私と間反対の和服を身に纏い、笑っているのだろう。
【意味がないこと】
11/8/2024, 6:21:50 PM