未知亜

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ㅤ会場に着いた時には曇の目立っていた空は、憎らしいくらい晴れ渡っていた。
「ではここで、バルーンリリースを行いたいと思います」
ㅤ司会者のにこやかな声が手順を説明するなか、参加者に色とりどりの風船が配られた。どうぞ、と慇懃に押し付けられた黄色の風船を私は睨む。よりによって、黄色。
ㅤ大階段を降り切った二人には、ピンクのハートが手渡されていた。ひとつの風船のひもを、重なった手が大事そうに握っている。
「皆さま、ご準備はよろしいでしょうか。お二人の幸せが天まで届きますようにと願いを込めて。3、2、1でバルーンのリリースをお願いいたします」
ㅤ掛け声と共に、無数のバルーンがふわりと浮き上がる。拍手とシャッターの音が渦巻く。数秒遅れて、私は手を離した。
ㅤ最後までポツリと離れたまま、空に溶ける黄色を見送る。幸せを願い損ねた私の心そのものみたいだと思いながら。


『空に溶ける』

5/21/2025, 9:59:16 AM