願いを叶える奇跡の杯、なんて本当はどうでもよかった。国に繁栄をもたらす至宝、そんなもの、本当は存在しないことなんて分かっていた。
それでも探し続けたのは、旅を続けていれば見つけられると思ったからだ。
奇跡をもたらす何か、ではなく、私達の内側から変わっていく為の何か、を。
探して、探して、探し続けて。
自分の中から何かが変わっていくのを信じて。
帰り着いた果てに何かを見つけられるのを信じて。
幸せは、すくそばにありました。
なんて、まるでおとぎ話のような結末を。
みんなが願った筈なのに、気が付けば誰も彼もが一人きり。廃墟の中に、荒野の中に、冷たい海に、一人きり。
みんなが何かを間違えて、みんなが何かに夢を見て、みんながみんな、いなくなった。
END
「君を探して」
3/14/2025, 3:47:53 PM