“友達の彼女“
『今日家に泊まらない?泊まるならウチの前に来てね!!』
そう送って断られてもめげずに何度も誘っているのにまるで返事がないし既読もつかない。まずい、これは通知が電源を切られている。やっぱりホントを話した方が良かったかな、いやでも彼女は気付いてないみたいだし…。
そんなことを思いながら私は、必要最低限の持ち物を準備して家の外に飛び出す。彼女や学校には風邪と言ったがもちろん嘘だ。なんといったって今日は……
間に合うだろうか?
私は幼い頃、何も持ってなかった。何も認められなかった。物心ついた頃から親の顔を知らず、大して凄い特徴も持っておらず。心が成長するにつれ、劣等感が内側から身を焼くようだった。
けれど、少しでも特徴が出来るように、私は勉強に励んだ。里親に頼み込んで金を貰い、高校に入って一人立ち。そこで彼女に会った。入試ではどうやら成績最上位で、運動もできると聞く彼女。
そんな彼女の欠点は人当たりが悪いところだった。それでも私は彼女の友達になりたかった。友のいない優等生の唯一の友達。それに憧れた。
結果的に彼女の大の親友にまでのし上がれた。誰にもできなかったことを成し遂げた優越感はとめどなく溢れ出て、どっぷりと私をその海に浸からせた。
だから。そんな彼女を失いたくない。
「……間に合わなかったか」
彼女の家はなかった。いや、家はあったが、それはただの廃墟。誰も住み着かない屋敷に変貌していた。
また置いて行かれた。今度は私自身が彼女を強引に家に連れ込めば救えるだろうか。いっそのこと…。
鞄の中にしまったナイフは、既に何度も役に立てていなかった。
【優越感、劣等感】
お題が更新されるごとに進む物語No.5
7/13/2023, 10:48:37 AM