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怖がり



遠い未来で君が淋しくならないように

戯けるように微笑む姿が遠くなる。
心の奥底に居るのに、忘れないのに
錆びていく像を見ては
どうしようもなく懐かしい。

暖かな風を受けて花が咲き乱れる。
明確に思い出せるのに
思い出せない表情に時の流れを思った。

たった10年に囚われているわけではない、
でもたった10年が何よりも大切な記憶だった。

ねぇ、ヒンメル。
私は思うよ。君、少しわかりづらい。

各地に置かれた『勇者の像』が
経年劣化に耐えられずに少しずつ数を減らすなか
ここだけはずっと変わらなくあり続ける。

人里から離れたからこその森の中
忘れ去られたようにひっそりと。
だから淋しくなったらここに来る。

人を知ろうとして見えなかったものがたくさん出来た。置いていかれる寂しさも、置いていかねばいけない寂しさも。やっとわかったんだ、ヒンメルが言ってたこと。

置いていかれるのは淋しいね。

そして置いていくのは『怖い』ね。
君はきっと怖がっていた。

見えなかったものがわかるようになって
どれだけ想われていたかを知った。
それを知った時、どうしようもなく『淋しく』なった。君が恐れたように。

でも少し君はエルフを勘違いしてた。
古びた像に手を触れて冷たい感触に温かさを感じる。淋しいだけじゃない。それだけじゃなかったよ。1000年知らなかったのに孤独をくれた人。
それ以外の心をくれた君。知らなければよかったとは想わない。そんな言葉で否定したくないんだ。

像に向き合うと微笑む。
じっと見つめてからそっと離れた。

『うん、君は誰よりもハンサムだよ。
また来る。』

振り返ることはしないで彼女は静かに歩み去った。
美しく咲く花たちは彼女を応援するかのように風に揺れて見送った。



3/16/2026, 10:57:22 PM