『どこまでも続く青い空』
雲の上を歩いてるみたいだ。
何をしていても現実感がなくて、自分の存在すら信じられなくなっていた。踏みしめる自分の重さを感じられなくて、土の硬さも分からない。ただ、スマートホンに向かって独り言を綴って、野球の練習を横耳に歩いている。
部活をサボった。
空は曇っている。今にも雨が降りそうな冷たい風が吹き抜ける。風が耳に触れて、ぼうぼうと呼んでいる。何も出来なかったでくのぼうの自分を呼んでいる。ただ駐輪場に歩くことしか出来ない自分は、知る限りでいちばん暗い歌を歌った。ゴールデンボンバーの『断末魔』を、なるべく小さい声で歌った。しかしそれは、心の中で嵐を巻き起こすくらいの、狂おしい叫びだった。
孤独な人生よ 闇がただ包むなら
あなたの存在を突き刺して 突き刺して
血が流れる暗い 今すぐに
――――――雨は降らなかった。家に着いても降らない。それどころか、雲の流れとは反対に進んだから、うちの庭から見る空は星空が綺麗に見えていた。星は羨ましい。死んだ後に光を届けられるらしいから。僕も星になりたい。けど、死ぬ勇気も、一人で死ぬ寂しさに耐えられる自信もない。結局、なにもないのが僕だ。
翌朝、学校に向かいに自転車に乗ると、空は晴れていた。雲すらないその空は、嫌味なほどに色が濃い。漕げば漕ぐほど、風が顔を撫で付ける。自分の後ろで雑草がさざめくと、自分が存在していることがじんわりとわかってくる。
そこに喜びも悲しみもない。ただ、一切皆苦の生きる苦しみと、感覚だけが虚ろを漕いでいる。
10/24/2024, 8:26:17 AM