部屋に入ると立派なかまくらが出来ていた。
「どうなさいました」
明るい室内。閉め切られたカーテン。
なんでもないと、くぐもった声。
「お熱がありますか」
……いいや。
「横になられたほうがいいですよ」
もそもそと、分厚い壁がベッドの上で崩れてゆく。
毛布。
クッション。
布団。
まくら。
やがて現れた部屋の主。
積もった雪宿から、ぼんやりした目元のみ。
……外を見てもいい?
どうぞ。
遮断された夜のカーテンをひらけば当然、
聴こえては来ないはずの。
鈴の音。
話し声。
吹き消される湯気。
普段は口にしない甘さと。
笑い声。
包装紙が手渡され。次から次へと、
点灯の色が変わり。
「庭に出たい」
「いけませんよ、こんな熱で」
「箒が要るんだ」
部屋着のまま外に出て、歌いながら、歩道に積もった雪を掃く。通りかかった人々は物珍しそうに眺め、ときには立ち止まる子もいたり。
「……お水を持ってきますね」
音もなく閉じられてゆく部屋のドア、
外の景色に挟まれて、
少年はのぼせた息をつく。
ベッドまわりの雪が溶け出した。
寒気はおさまらない。
ふかく埋もれながらも、少年は箒にまたがって街を見下ろし飛んでいた。
【雪】
1/7/2026, 1:07:37 PM