「だから! 『Hallo』じゃなくて、『Hello』って言ってるでしょ!」
「だって『ハロー』なんだもん……」
「英語には発音のルールがあって、音とスペルは一致しないの!」
両親の仕事の都合でアメリカに行くことになった友人に、英語を教えて欲しいと言われた。私は幼い頃にアメリカで過ごしていた。だから、適任だと思われたのだろう。
超が付くほど英語が苦手な友人。まずは簡単な会話ができれば上々だが、簡単な英語は書けた方がいいだろうと思って教えてみたが全然ダメ。英語の授業はあるからある程度は話せたり書けたりしても良いのに、壊滅的だ。
「む、難しいんだもん……」
「ったく……そんなのも書けないで、向こうに行って本当に大丈夫なの?」
「一緒だったら良かったのに……」
「ダメよ。私に頼ってばっかりじゃ、いつまで経っても英語できないでしょ」
図星に友人は唇を尖らせていた。
「……でもこれは、書けるよ」
友人はノートに英語のスペルを綴っていく。
「これだけは、私から伝えようと思って……」
「……っ、バカ」
「……学校卒業したら絶対こっちに帰ってくるから、泣かないで?」
「泣いてないわよ……」
昔、アメリカに住んでたいたからといって、簡単に会いに行けるわけではない。知っている土地だから親近感を感じるけど、友人が向こうに行ってしまうと思うと、ありえないほど遠く感じる。
「……その約束忘れたら絶対許さないから」
「うんっ」
もう「泣いてない」と言って、誤魔化せないほど濡れた頬を温かな春の風が撫でた。
――bye bye...
3/22/2025, 11:03:23 AM