うぐいす。

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 僕にとって『恋』とは、所詮は上辺だけのもので、自分の欲を満たすための体の良い文句だった。
 幼少期、散々言われてきた「貴方のため」という言葉。
 学生時代、貴方のことが好きだから、と身勝手に感情を押し付けてくるクラスメイト。
 それが愛情か恋情か、はたまた別のなにかなんて僕にはどうだっていいが、とにかく鬱陶しくて仕方なかった。
 だから、恋なんて―――ひいては、それを飾り付けて彩る『恋物語』なんて胡散臭いものが、僕は嫌いで嫌いで、目にも入れたくないものだった。

 ―――そんな僕が、恋をした。
 行きつけの喫茶店の、新人の店員の女の子だった。
 仲良くなりたくて、意味もなく彼女のオススメを聞いたり、もしよれば、なんて言う勇気もなくて、だけど彼女のことがもっと知りたくて、彼女の後をつけたりした。
 ある日、いつも通り、帰宅途中の彼女をつけていると、そんな僕に気付いた彼女から「もうこんなことは止めて下さい」と非難の声を浴びた。
 ―――なんで。なんで、なんで。
 なんで。
 こんなにも―――ただ、君が好きなだけなのに。

5/18/2024, 1:48:37 PM