文学すきー!

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目が覚めると映画は終わっていた。
ずいぶん寝過ぎたようで、
ぼやけた脳みそでは何を見ていたかさえ
思い出せなかった。
スクリーンは俺だけを照らし、
そして、エンドロールが、下から上へと流れていく。
「.....寝過ぎたな」
そうポツリと呟いて、勿体無いと感じたのか、
何かもわからないエンドロールの終わりを
俺は見届ける事にした。
文字が、流れていく、
.....
..

おかしい
もう10分程は眺めただろうか、
エンドロールは終わらず、
文字が上から下へとただ繰り返し流れていく。
ポップコーンは底をつき、
ドリンクも全て飲み干した。
流石に外へ出よう、終わらないのはきっと、
何かの故障だろう。俺は空になった容器を持ち
劇場の外へ出た。
...やけに静かだ

誰もいないカウンター、
客どころか店員も居ない、なんて
俺の足跡だけが、広い館内に、
トスントスンと鼓動のように響く、
ハッキリして行く意識と、早くなって行く足音と、
俺の額に汗が走る。


今日は世界が終わる日だった、
外に出る。
もう、遅かった
鮮血のような赤さを持つ空に、
下から上へと星が、流れていく。
流れ星だ。
ビルの一つ一つが大きな影となり、地を覆う、
辺りは暗く、朝日のように眩い星だけが俺を照らし
さらに深い影を作る。
マナーモードになっていた携帯には、警報と、
アラームと誰かの着信履歴だけがあり、
それを見る気にはなれなかった。


今日は世界が終わる日だった、
そうだった。
そうだったんだよ。
トスントスンと、足音が戻る、
諦めたような、開き直ったような足音は、
劇場の闇へと吸い込まれ、
そして遠く、とても遠くにきえた
エンドロールの、終わりが聞こえる。

『目が覚めたら』

7/10/2024, 2:00:05 PM