ちっちゃなはは

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“見つめられると”

むかしむかしの事でした
いつもの通勤電車の出来事です

同じ電車の同じ時間同じ車両
いつもの場所で
あなたに出会った

別に会話をする事もなくあいさつをする訳でもない
ただ同じ電車の常連さん
ガラス越しに映るあなたの横顔が少しばかり気になっていた

いつの間にか、たったの5駅だけのその時間が楽しみになっていた

ある日の事いつものようにただあなたの後ろ姿をチラチラと見ていると
どこかで視線を感じた

トンネルに入った時に、あなたとガラス越しで視線があった
”見られてた?“
突然恥ずかしくなり下を向いた
私は下を向いたまま電車を降りた

電車が去った後に背後で声が聞こえた
“おはようございます”
あなたが笑顔で立っていた

それから
ただの常連さんから
”おはようございます“の常連さんになった

私の中であなたに見つめられる度に“”ベコニア“の花が一輪ずつ咲いていくような気持ちだった

たった5駅の常連さん
むかしむかしの淡い思い出

今でも家の庭には“ベコニア”の花が毎年綺麗に咲いている










3/28/2024, 1:27:14 PM