秋風
外を出た瞬間感じる匂い、やんわり頬を撫でる冷えた風、違和感があるノド。すっかり冬だな、と思っていた。
秋無いじゃん、冬来るの早すぎ、などと騒ぎ立てるsnsの人間らを見て、無意識のうちにそれが当たり前だと感じてしまうことがよくある。
今日、友人と窓際で軽く話していたとき、灰色の空を眺め私はなんともなしに言った。
「冬やな、寒い」
私の言葉に、友人はあっけらかんと返す。乾燥した空気、そのままで。
「まだ秋やろ」
友人が指さす外の世界には、華やかな紅に染まる木々があった。
自分のことで精一杯になり、季節すら碌に感じられず、周りの言葉そのまま鵜呑みにする自分に呆れる。
夏と冬に挟まれるのが秋ではない。
その日の帰り道、秋の山を見ながら、私は風を飴色に感じた。
11/14/2024, 4:56:10 PM