「ハッピーエンド」
視界がだんだんと明るくなっていく。夜明けのように、ゆっくりと。点々と人影が蠢き出し、少しずつ掃けていく。私は座席に深く座り直す。仲良さげなカップルが、甘ったるいポップコーンの匂いを引き連れて私の前を通っていった。
面白い、と言えばそうだったのかもしれない。それでも私の心は満たせなかった。あの陳腐で使い古されたハッピーエンドは私の目を黒く塗り潰すようだった。その作品を一瞬で使い捨ての娯楽へと変えてしまった。私ならこうはならなかった。なんて言ったところで主人公は答えてくれない。死人には口は愚か耳も無いのだから。私は誰もいないシアタールームで目を瞑り、深く息を吐いた。そして思わず笑いが込み上げてくる。私の人生というものはこんなにも呆気なく、つまらなく、私自身の創作にしかすぎないことを思い知った。息を吐いた後、少しだけ後悔した。
3/29/2026, 2:10:02 PM