誰かのためにつく嘘を、私は知らない。
私は、私のために嘘をつくし、
あの人も、この人も、自分を守ることに嘘という道具を使う。
そういうものだと、然るべきものだと、思っていた。
けれど今。
ここ、真っ昼間だというのに閑散という言葉を抱きしめる小さな公園の、
薄汚いベンチに座ってただぼんやりとしている私の隣に躊躇なく座った、年端も行かない子供が、
なぜ1人なのか、思わず物騒なことを考えてしまいそうになる、幼気な子供が、
私が持てば片手で収まりそうなボールを両手で持ち、私を覗き込むようにして、言った。
「あのねあのね!ぼくね!
ヒーローになりたいの!
ヒーローになってね!たくさんのひとをたすけたいの!
せかいのへいわをまもるって、かっこいいでしょ??」
その、流れ星のかけらを瓶に集めたかのような瞳が、
なのにどこか懐かしい気持ちになるその瞳が、
心底、美しいと思った。
「世界を守るヒーローに、きっとなれるよ」
1/24/2025, 6:29:12 PM