雨蛾禰

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 月光の降り注ぐ一際静かな夜。
 少し肌寒いくらいのその日は、何故だか妙に心細く、物悲しくなるもので。そんな時は度々、射し込む月光だけを頼りに、ぼんやりとした輪郭を鏡に映しとるのだ。




 「……………………何を、今更…………」




 鏡に映った己の顔。


 しかしどうだろう?


 一度記憶の狭間に落ちてしまえば、そこに映るのは懐かしい面影が宿る"誰か"の顔だ。
 当然だ。
 当たり前だ。
 似ているのなんて、至極普通の事なのだ。

 忘れるつもりなんてない。忘れられるわけがない。

 苦悩と贖罪と逃れられぬ罪悪感の中で。
 けれどその面影の中に、何れでもない大切な物が確かに宿っているのだ。





 貴女と同じ色の髪。
 貴女と同じ色の瞳。





 罪は消えない。
 罰は終わらない。

 永劫の罪過は死せるその時まで続く。

 ただのその《罪と罰》も、貴女と同じ色だと言うのなら。



 ほんの、少しくらい。







 貴女にだけは許されたと。思っても、良いのでしょうか。





【題:好きな色】

6/21/2024, 5:29:05 PM