またね!
小学校3年生の春、とても気が合う友だちができた。大人しくてあまりしゃべらない子だったけど、久美ちゃんは、休み時間になると私のところにやってきてそばにいる。
そうされると私も嬉しいし、いろいろ話をするようになった。何か言うと、一言二言返事もしてくれて、だんだん話が弾むようになった。
クラス替えが2年毎だったので、2年間は少なくとも同じクラスに居られると思ったのに、久美ちゃんは父親の仕事の都合で、4年生の秋に転校することになった。
私は、驚いた。せっかく親しくなったのに寂しくて悲しかった。でも久美ちゃんに言ってもどうにもならないことは分かっていた。久美ちゃんも悲しそうだった。
クラスで前に出ての挨拶のとき、久美ちゃんは私の方をみたとたんにポロポロ涙をこぼした。私も泣いた。
次の日が日曜日で、久美ちゃん一家の引っ越しの日だった。私は、早めに久美ちゃんの家に行きたかったが、親に「引っ越しの時なんかすごく忙しいんだから、早く行ったら迷惑だよ」と引き留められた。
やっと許しを得て、出発時間のほんの少し前に久美ちゃんの家に着いたら、誰も居なくて何も無かった。カーテンが外された窓から、家の中が見えたのだ。多分、準備が早く出来たので、早く出発したのだろう。
私は、行き場の無い悲しみに、久美ちゃんの家の前で号泣した。気がついたら泣きながら繰り返し「久美ちゃんまたね!久美ちゃんまたね!」と叫んでいた。
この出来事は、今でも私の心に傷となって残っている。久美ちゃんだって、私が行けなかったことで、泣いてくれたんじゃないかと思っている。
No.154
4/1/2025, 3:46:51 AM